2015年2月1日 対 が ん 協 会 報 (3)
今回、生徒たちにできるだけ多く発 言する機会を与えようと、佐瀬先生は 随所に工夫を凝らした。中でも生徒た ちが一番盛り上がったのは、倍々ゲー ム。順々に生徒が指され、2×2= 4、4×2=8、8×2=16…と、前 の生徒が答えた数字の2倍の数を答 えていく。あっという間に答えは1 万、10万と大きな数字になっていく。 倍々ゲームをがん細胞の増殖の様子に 例えて、早期発見・早期診断が大切だ と話すと、生徒たちは真剣に聞き入っ ていた。
佐瀬先生ががん教育の講師を務める のは4回目。訪れた学校の先生たちか らヒントを得て、こうした子どもとの コミュニケーション方法を考えた。ま た、どの学校でも中学生たちの感受性 の豊かさを実感したという。
最後に「何よりも大切なのは、命や 生きているということ。命をつないで くれた家族や周りの人に、思いやりの 気持ちを持つこと。今日帰ったら、こ んな授業をしたよ、と家族と話すきっ かけにしてほしい」とメッセージを送 った。
がん教育が受診率向上につながると考 え、平成24年から、小学6年生と中 学3年生の授業にがん教育を最低1時 限取り入れることにしている。ただ、 一部の保護者からはがんの話を聞きた くない子もいるとの声も聞かれたとい う。そこで千川中学校は、がん教育を この課題別学習教室に組み入れ、生徒 自身が選べるようにした。
がんの講座には、36名の生徒が出 席した。講師は、順天堂大学大学院教 授で循環器専門医の佐瀬一洋先生。佐 瀬先生は自身も5年前に骨軟部肉腫と 診断され、手術と抗がん剤治療を終え ている。当時の驚きとショックから話 し始め、罹患率の性別、年齢別グラフ などを示しながら、「みんなも、がん が身近だとはあまり感じていないかも しれない。でもたとえば、ご両親はが んになる人が増えてくる年代かもしれ ないね」と語りかけた。
日本人の2人に1人ががんになるこ と、3人に1人ががんで亡くなること を説明し、「今もがんと闘っている人 たちのケアもとても大事なこと」と力 を込めた。
日本対がん協会は1月17日、豊島 区立千川中学校でがん教育の出前授業 を行った。
豊島区の小・中学校ではほぼ毎月、 地域の方が授業を見学できる「としま 土曜公開授業」が開かれている。千川 中学校はこのとしま土曜公開授業で年 2回、課題別学習教室を行っている。 現代の社会問題を課題にした複数の授 業を用意し、生徒それぞれが関心のあ る講座を選択する仕組みだ。講師は外 部の専門家が務める。
この日は1、2年生を対象に、日本 対がん協会による「がん」をはじめ、地 盤工学会による「地震」、豊島区役所清 掃環境部資源循環課による「ゴミ」など 7つの講座が開講された。
豊島区はかねてがん対策に熱心で、
豊島区は、全国に先駆けて独自のがん教育プログラ ムを実施している。その取り組みについて、同区教育 委員会の教育指導課指導主事の松原貴志さんにお話を 伺った。
豊島区立千川中学校で公開授業
選択制・少人数授業で、がんを考えるきっかけに
がん教育
この条例に基づき、区 教育委員会は翌年から小 学校6年生と中学3年生 の保健の授業でがんに関 する教育を行うよう教育 課程に位置づけました。 専門的な知識のない教員 にとって教材の作成は負 豊島区は平成23年にがん対策推進条例を施行し、が んの予防・早期発見を推進するための施策のひとつとし て、「教育委員会と協働し、健康教育の一環として、児 童・生徒及び保護者に対して、がんの予防に関する普及 啓発を図る」という一文を盛り込みました。
きます。指導の手引きは、スライド教材を見せながら 解説するための台本にあたります。
あわせて教育委員会では、保護者の理解を得るため、 がんに関する教育の目的や内容を説明したリーフレッ トを全家庭に配布しました。また、授業を実施する前 に、学年だより等で授業内容を周知するなど、保護者 の皆様との連携に力を入れています。今後、各学校に おける創意工夫ある授業実践を区内全小中学校で共有 するなど、さらにがんに関する教育が充実するよう取 り組んでいます。
担でしたが、この負担を軽減す るため、国立がん研究センター と共同で、教材と指導の手引き を作成しました。
教材は、わかりやすいスライ ド形式で、教員自身が必要に応 じてカスタマイズすることもで
独自の教材を作成、全小・中学校でがん教育を実施
区作成の指導の手引き